最近、極端に悲しくなることが増えた。
そういう時期なんだろうか。
落ち着かない。
感情が抜けていて、でもそんな”感じ”はする。
変わらない毎日。
人は一体何をしてるのだろうか。
前に進むことは難しい。
でも、前に進んでいかないと外に出られなくなるような気がして怖い。
怯えながら、暗闇を進む。ただ、進む。
ここはトンネルである。
もう少しでここを抜けて、光と再会する。
その少しあとに、また同じくらいの長さをしたトンネルが待っていて、そこで僕は、またひとりになる。
そこをくぐり抜けると、光は相変わらず向こう側にいる。
ここがどこであるかも分かっているし、今後どうなるかもなんとなく分かるような気がする。
明るくなって、暗くなって。暗くなってもまた明けて、すぐに蓋は閉じられる。
世界はずっと明るい。
ヘッドフォンを外せば、その静けさに驚かされる。
世界は何も変わっていない。
「意味なんて考えるな」
そんな無言の圧に嫌気が差して、僕はまた耳を塞ぐ。
そして、世界はまた暗くなる。
ドキュメンタリー番組では、必ず悲しいことが起きる。続けて、まるで用意されていることを知っていたかのように、その悲しさは嬉しさに変わって、放送は逃げるようにエンドロールを迎える。
次のトンネルに入る前に「次はお前の番だからな」と車から降ろされたような気分だった。
歩きたくない。
この先にトンネルが待っていることを、僕は知っているから。
戻りたくもない。
ようやくの思いで、くぐり抜けてきたばかりなんだ。
暗闇に慣れることでしか、僕たちは前に進んでいけないのだろうか。
それを、人は「大人になってしまった」と後悔するのではないか。
暗闇に慣れても、僕たちは光を求めて歩いていけるだろうか。
夜の街で夜行性の人々が戯れるのを横目に、僕は怖くなった。
静かな世界で、喧騒は「人」そのものだ。
ふとそんなことを思った。
次にトンネルがあると思うから、視界は暗くなる。
人が互いの孤独に寄り添い合うから、悲しみはもっと深くなる。
人が建てたトンネルで、人は暗闇に怯える。
僕の悲しみは、僕が作り出したものだ。
世界は変わっていない。
世界は静寂なままだ。
世界はずっと遠くまで続いている。
途切れず、遥か先の未来までずっと。
光の筋をたどるように空を見上げると、日差しが待ち伏せていたように僕の目に注がれて、視界はホワイトアウトした。
咄嗟に閉じた目を開くと、車から降りてきた男性がこちらに手を振っているのが見える。
影ひとつない道。視界は良好だった。
「あそこまで行こう」
足はもう踏み出していた。
Written by Shun Muraki. Thank you.